装丁の版下を作成するには、本の表紙や背の幅などの正確なサイズを知る必要があります。そのためには「束見本(つかみほん)」を作らなければなりません。
「束見本」は、実際に使用する用紙(印刷していない白い紙)を使って、実際のページ数にあわせて製本した、いわば試作品のような本です。おもに本の各部所のサイズを測るために使用します。
「束見本」は、製本所(または印刷所)が作ってくれます。ほとんどの場合、専門の人が、手作業で作ってくれているようです。
束見本を発注するには、まず「判型」「製本様式」「総ページ数」「本文用紙」「綴じの方法」「扉の有無」を決めます。実際とまったく同じ束見本を作るなら「表紙」「見返」「扉」の用紙も決める必要があります。ただし、通常は、それらを決めなくても、判型や製本様式、総ページ数や本文用紙などを指定すれば、製本所が表紙や見返に適当な紙を使用して束見本を作ってくれます。
束見本の発注方法は、出版社によって多少異なります。
出版社には、印刷所・製本所・紙屋さん・加工屋さんと別々に取引している出版社と、製本以下を印刷所に一括してまかせている出版社があります。別々に取引をしている出版社の場合は、束見本を発注する際、必要とする本文用紙を紙屋さんから取り寄せ、それを製本所にわたす必要があります。
束見本は、通常、2冊作るので、総ページ数から取数(1枚の紙に何ページ印刷するか)を計算して2冊分の本文用紙を紙屋さんから取り寄せます。詳しくは「用紙サイズと取数→本文用紙の注文」を参照してください。
印刷所に一括してまかせている場合は、「判型」「製本様式」「総ページ数」「本文用紙」「綴じの方法」「扉の有無」を印刷所に伝えれば、あとはすべて印刷所のほうで手配してくれます。
判型(はんがた)は、本のサイズ(縦と横の長さ)の規格で、A判は国際規格で、B判は日本工業規格で決められています。
書籍の場合、比較的多い判型は「四六判」と「A5判」です。四六判のサイズは、厳格に決まっているわけではなく、出版社によって数ミリ違う場合があります。各出版社のサイズは「デフォルトの設定→ページサイズの設定」を参照してください。A5判のサイズは規格で「148×210mm」と決まっています。
四六判 | 130×188mm | (出版社によってサイズが異る) | |
A5判 | 148×210mm | ||
B5判 | 182×257mm | ||
B6判 | 128×182mm | ||
A6判 | 105×148mm | (文庫判・出版社によって微妙にサイズが異る) |
製本様式(製本方法)は、大きく「上製本」と「並製本」に分けることができます。上製本は「本製本」、並製本は「仮製本」と呼ばれることもあります。
上記以外にも、総皮装の「がんだれ」や、表紙の天地と小口側の三方を内側に折る「フランス装」などがありますが、ちょっと特殊な製本方法ですので説明は省略します。
上記の「かがり綴じ」や「アジロ綴じ」は本文用紙(折丁)の綴じ方です。BOOKHOUSEでは、多くの場合、「アジロ」を指定します。
かがり綴じ |
折丁を一折ずつ糸で縫い合わせて綴る伝統的な方法です。ほかの綴じ方とくらべ、ノド元の開きがよく、ページの脱落も起こりにくいなどの、非常に大きなメリットがあります。「糸綴じ」ともいいますが、一般的には「かがり」と略称されます。 あくまでBOOKHOUSEの場合ですが、この「かがり綴じ」は、強度も耐久性も開き特性ももうしぶんないのですが、加工に時間がかかり、制作原価も高くなるので、特別な場合以外は指定しません。 |
アジロ綴じ |
丁合した背に切り込み(スリット)を入れて、そこに接着剤を浸透させて、本文と背を接着させる方法です。一般的には「アジロ」と略称されます。 「アジロ綴じ」は、工程をライン化することができるので、納期とコストの削減ができます。ただし、紙の斤量が「四六判 135kg」以上の厚い本文用紙を使用すると、ページを開いたときに背の接着部分に負荷がかかり、「背割れ(のど割れ)」という現象が起こりやすくなります。135kg以上の厚い紙を使用する場合は「かがり綴じ」にしたほうがいいかどうか製本所と相談してください。 |
無線綴じ |
丁合した背の部分を少しだけ切り落として、そこに接着剤をつけて、本文と表紙を接着する方法です。 「無線綴じ」は、ページ数が少ない薄い本だと接着剤がつく背幅が狭くなってしまうので、強度が不十分になる恐れがあります。背幅3mm程度は必要です。 また「無線綴じ」は、製本の構造上、ページの開きが悪く、ノドの部分が見えづらくなります。とくに1枚の写真や図版を見開きでレイアウトする場合は、写真や図版の真ん中、ノドの部分が見えなくなってしまうので注意が必要です。 無線綴じには「PUR製本」という方法もあります。これは従来の製本用接着剤「EVA(エチレン酢酸ビニル)系ホットメタル」ではなく、「PUR(ポリウレタン)系ホットメタル」を使用した製本で、接着力が強く、ページの開きが良いという特徴があります。従来のホットメタルにくらべ接着力は2倍ともいわれています。 |
【補足】 | 通常、本は天と地と小口側を断裁して仕上げますが、断裁せずに紙が袋状になっている本があります。これを「アンカット製本」といいます。アンカットにはいろいろな種類があり、昔の文庫本には、天だけがアンカット(抄造したままのギザギザの状態)で、地と小口側だけが断裁されているものがありました。俗に「袋とじ」と呼ばれている雑誌なども、アンカットの一種ですね。 |