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用紙

用紙サイズ

書籍の印刷は、1枚の大きな紙に、本文を数ページ、またはカバーなどを数面まとめて印刷し、それを折ったり裁断したりして1冊の本に仕上げます。この大きな紙は、一般に「全紙」または「原紙」と呼ばれています。JIS規格によって「A列本判B列本判「四六全判「菊判「ハトロン判」の5種類の大きさが決められています。
原則的には、書籍サイズが「A判」の本を印刷するときは「A列本判」の全紙を、書籍サイズが「B判」の本を印刷するときは「B列本判」の全紙を、書籍サイズが「四六判」の本を印刷するときには「四六全判」を使用します。

本文用紙取数
【補足】 A列は、ドイツの工業規格が元になっている国際規格(ISO)です。
B列は、日本標準規格(JIS)で、江戸時代に公用紙として使用されていた「美濃和紙」のサイズに由来しているといわれています。国際規格にもB列の規格がありますが、名前は同じでも寸法が異なります。
菊判は、新聞用紙に使用する目的で、アメリカン・トレージング商会から輸入した紙のサイズです。「菊」という名称の由来ですが、アメリカン・トレージング商会の商標がダリアで、それが菊に似ていたからという説があります。また、新聞の「聞く」に由来しているという説、菊は皇室紋(菊花紋章)であるからという説があります。A列より少し大きいサイズなので、菊判はA列本判と似た使われ方をしています。
四六判は、イギリスの紙の規格である「クラウン(787mm×1092mm」が元になっているといわれています。当時、書籍によく使用されていた「ヨコ4寸×タテ6(約120×180mm」のサイズが取りやすかったため「四六判」と呼ばれるようになったとの説があります。
ハトロン判は、ドイツ語の「patronen papier(弾丸の薬莢を包む紙」が語源とされています。耐久性に優れた丈夫な紙で、日本ではそれを「ハトロン紙」と呼んでいました。当時、ハトロン紙のサイズは「3尺×4(909×1212mm」でしたが、それがやがて規格化され現在のサイズ「900×1200mm」になりました。
斤量

斤量(きんりょう)は「紙の重さ=厚さ」を表すときに使います。
紙の重さを表す単位に「連量」という用語がありますが、斤量も連量も同じ意味です。
印刷に使用する紙は、原紙1000枚を「(れん」という単位で表し、注文するときは「20連」または「20R」と表記します。
斤量も連量も、この「1連=1000枚」の重さを表しています。たとえば「四六版110kg」ならば、四六全判(1091×788mm)の紙1000枚で110kgの重さがあるということになります。この斤量や連量が大きくなればなるほど、厚い紙になります。
下の表を見てください。紙の大きさが変われば、同じ厚さの紙でも、斤量や連量(重さ)が変わります。たとえば、四六全版で「110kg」の紙と同じ厚さの紙は、菊判では「76.5kg」になります。
斤量や連量に対して「坪(つぼりょう」という表記もあります。坪量は1m²あたりの重量のことです。「g/m²」で表します。1m²あたりの重量なので、紙の大きさが変わっても、坪量は変わりません。四六全判でも菊判でも同じ坪量です。

斤量
【補足】 かつて「斤量」は、500枚あたりの重さだったのですが、いまでは「連量」と同じ1000枚あたりの重さを表しています。

BOOKHOUSEでは、一般的な文字ものの本文用紙に「四六判 70kg」前後の紙を使用しています。たとえば「ラフ書籍 四六/Y 71.5kg「ラフクリーム琥珀 四六/Y 66.5kg「嵩高書籍55A 四六/Y 61kg」などです。
以下に斤量によるだいたいの用途を記しておきます。四六全判の斤量を基準にしています。

70kg コピー用紙として使われている紙の厚さです。小説本や研究書など、多くの本文用紙として使用されています。
90kg コピー用紙よりも少し厚みがあります。
90kgぐらいの厚みがあると、インクの裏抜け(紙の裏に文字や図版などが透けて見えること)の心配が少ないので、全面写真や色ベタの印刷などにも使用できます。
110kg ある程度しっかりとした厚みがあります。ポスターや高級感があるカタログなどに使用されます。
135kg 厚めの紙です。本文用紙としてはほとんど使われません。コート紙やマットコート紙の135kgは、写真集などの印刷に適しています。
180kg しっかりした厚い紙です。官製ハガキとほぼ同じ厚さです。160kg以上になると、並製本の表紙にも使用できます。
順目・逆目

これは初歩的なことですが、用紙を決めるときは、紙の「流れ目」に注意しなければなりません。紙は、原料となるパルプを一定の方向に流しながら製造(抄造)されるため、そのパルプの進行方向に繊維が揃いやすく、それが「紙の流れ目」になります。
用紙の取数を計算するときは、必ず紙の目が書籍の「(上」から「(下」に流れるように考えて計算してください。反対に取ることを「逆目」といい、本の開きが悪くなったり、折りづらくなったりします。
紙の長辺に平行に繊維が流れている紙をタテ目(T目)の紙といいます。タテ目の場合は、サイズを表記するときに「788×1091mm」と、紙の上部の長さ(小さいほうの数字)を先に表記します。
反対に、紙の短辺に平行に繊維が流れている紙をヨコ目(Y目)の紙といいます。ヨコ目の場合は、サイズを表記するときに「1091×788mm」と、紙の上部の長さ(大きい方の数字)を先に表記します。

流れ目

たとえば、四六判の書籍を印刷するときは、四六全判のヨコ目の紙を使用します。発注書の用紙の欄には「四/Y」などと記します。A5判の書籍を印刷するときは、A判または菊判のタテ目の紙を使用します。発注書には「A/T」または「菊/T」と記入します。
これは本文用紙だけでなく、カバーなどの用紙を決めるときも同じで、逆目で印刷するとカバーがかけづらくなります。

取数

前述しましたが「四六判」の書籍は、普通、「四六全判」の用紙で印刷します。「四六全判」には、表裏両面で「64ページ(片面32ページ」が印刷できます。この1枚の用紙に何ページ(何面)とれるかという数値を「取数(とりかず」といいます。

四六版取数

代表的な書籍の「判型」と「寸法、使用する「用紙」と「取数」を示します。下記の組み合わせ以外でも印刷することはできますが、取数が少なくなってしまい、紙のムダがでてしまいます。

取数
本文用紙注文

本文用紙の発注量について簡単に説明します。
四六判 224ページ、刷部数10,000部を印刷する場合を例に説明します。
まず、束見本の発注量です。束見本は、通常、2冊作ります。四六判の書籍は、四六全判の用紙から「64ページ」とれますから、1冊分の必要枚数は「224ページ÷64ページ=3.5枚」になります。それの2冊分ですから「7枚」が必要枚数です。しかし、束見本を作るときは、製本予備(製造工程で汚れやヨレなどで使えなくなったときのための予備)が必要ですので、きりのいい数字「20枚」を注文します。10枚だと予備が3枚なのでやや少ないと思います。

  束見本用紙の発注数量
  総ページ数 224P÷64ページ×2冊=7枚 予備13枚 発注量 20枚

実際に印刷する場合の発注量は次の計算になります。
1冊分の必要枚数は、束見本のときと同じで、1冊あたり「224ページ÷64ページ=3.5枚」が必要になります。刷部数は10,000部ですから「3.5枚×10,000部=35,000枚」が必要な枚数です。これを「連単位」になおすと「35,000枚÷1,000枚=35(35R」になります。
印刷の場合も予備が必要です。印刷予備は、おもに「色合わせ」や「見当合わせ」などの試し刷りに使います。必要な予備枚数は、印刷所によって異なりますが、BOOKHOUSEが取引している印刷所の場合、1(1Cあたり印刷1台につき100枚が必要とされています。印刷の「台」は、オモテを刷って1台、ウラを刷って1台、つまり四六全判のオモテとウラを刷ると、台数は「2台」になります。224ページは「224ページ÷64ページ×2台=7台」になります。1色あたり1台に100枚の印刷予備が必要ですから「7台×100枚×1色=700枚」です。印刷予備も、きりのいい数字「1,000枚=1連」を注文します。
ですので合計発注量は「36連」となります。

  印刷用紙の発注数量
  印刷に必要な枚数……総ページ数 224P÷64ページ×10,000部=35,000枚(35R)
  印刷予備……224P÷64ページ×2台×1C=7台 7台×100枚=700枚 → 1R
  発注量……必要枚数 35R+予備1R=36R

用紙の発注単位は「1,000枚=1連」が基準ですが、最低ロットは「250枚=0.25連」です。ただし「0.25連」を注文できるのは、1連以上注文した場合に限る、と言われたような記憶があります。まあ、とは言っても、紙屋さんって、かなり臨機応変に対応してくれますけど。

【補足】 すでに述べましたが、印刷予備の計算方法は、印刷所によってかなり違います。たとえば、上記のように「台数」を基に計算するのではなく、印刷の「通し数」を基に計算する印刷所もあります。はじめてお付き合いする印刷所の場合は、印刷所に予備枚数を聞いてください。そのとき計算方法を教えてもらってください。「ドンテン返し(これを説明すると長くなるので省略しますがなどで「刷版料」や「通し数」を減らせることがあります。
紙の見本帳

紙の見本帳 BOOKHOUSEでは、前述したように一般的な文字ものの本文用紙に、「ラフ書籍 四六/Y 71.5kg」や「書籍用紙イエロー 四六/Y 72kg」などを使っています。
本文以外の表紙・カバー・オビ・扉などの紙は、「タント」「マーメイド」「レザック」などさまざまな紙を使用します。これらの紙は一般に「ファンシーペーパー」と呼ばれますが、ファンシーペーパーには、はっきりとした規格や定義はありません。本文用紙やコピー用紙などにはない、彩色や地の手触り、風合いなどが加えられた特殊な表情を持つ紙の総称です。
ファンシーペーパーは「見本帖」を見て選びます。ファンシーペーパーの見本帖は、一般的には紙屋さんが提供してくれますが、紙の商社「竹尾」などで購入することもできます。また、会員登録すれば「帆風」で上質紙やコート紙の見本帳などを無料で入手することができます。

【補足】 編集や装丁の世界では、本文以外の「表紙「カバー「オビ「扉「見返」などを「表まわ(おもてまわり」ということがありますただし「表まわり」を「表紙まわ(表1・表2・表3・表4」の意味で使っているところもあるので注意が必要です。
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