[テキスト配置(流し込み)]や[レイアウト調整]などを説明します。まず最初は、基本中の基本、 テキスト配置(テキストの流し込み)です。でも、その前に、流し込む「テキストの整理」から説明します。
著者から受け取ったテキストデータは、多くの場合、そのままでは使えません。たとえば、段落字下げに半角スペース2個を使用していたり、3点リーダが中黒3個だったり、行末にムダなスペースが入っていたりします。ですので、流し込む前に、それらを整理する必要があります。ただし、データを整理したり、修正したりする場合は、オリジナルデータのコピーで作業します。オリジナルデータはかならず残しておきます。
テキストを整理するときに、とくに注意するのは、つぎの点です。
① |
段落字下げのスペース……半角スペース2個が使用されていることがあります。 |
② | 3点リーダ……中黒やピリオドが使用されていることがあります。 |
③ | 2倍ダーシ……半角ダーシやマイナス記号が使用されていることがあります。 |
④ | 半角カッコ……サーチして全角カッコに変換します。 |
⑤ | ムダなスペースの削除……レイアウトを調整するためのムダなスペースを削除します。 |
InDesignの「段落字下げ機能」を使用する場合は、段落行頭のスペース(1字アキ)をすべて消去します。和欧混植の場合は、InDesignでは欧文の前後に自動的にアキができるので、テキストの欧文の前後のスペースも削除します。洋数字を使用する場合は、「自動縦中横」で設定した桁数以外の数字を全角にします。1桁の数字も全角にします。これらは「正規表現」で検索すると楽です。
また、BOOKHOUSEでは、簡単な「用語の統一」もテキストを流し込む前にやってしまいます。たとえば「数字表記」や「送り仮名」の統一などです。
数字表記は、大きく「漢数字表記」と「洋数字表記」にわけられます。漢数字表記は、位取りの単位
(十・百・千など)を入れるか、入れないかを統一します。つまり「五十円」にするか「五〇円」にするかですね。「万・億・兆」だけを入れる場合もあります。位取りの単位を入れる場合でも、西暦には位取りの単位を入れないなど、こまかい規則もあります。くわしくは校正に関する本をご覧ください。
送り仮名には、「本則」と「許容」があります。下記にあげた例はほんの一部です。くわしくは文部科学省の「送り仮名の付け方」をご覧ください。
本則 | 行う・断る・表す・著す・現れる・生まれる・終わる・当たる・代わり・打ち合わせ など |
許容 | 行なう・断わる・表わす・著わす・現われる・生れる・終る・当る・代り・打合せ など |
BOOKHOUSEでは、誤読をさけるため、原則的に送り仮名の多い表記をもちいています。例をあげると「行う」を「行なう」に統一するなどです(許容の表記があるゲラを校正にまわすと、エンピツが入ってきます。校正者は、完全な誤字脱字には赤字を入れますが、通常、ユレの表記にはエンピツを入れてきます)。
これらの整理や統一は、テキストを流し込んだあとで修正することもできますが、流し込む前にテキストエディタなどで整理したほうが効率がいいはずです。
InDesignで修正する場合は、「用語統一」という名前の空の[文字スタイル]を作って、それを適用して修正しています。そうすると、あとでどの文字を修正したのかがわかります。
【補足】 | 用語の統一は、わたしたちが編集を担当している本の場合、あたりまえのことですが著者の了解を得てから統一しています。文字組だけの場合は、担当編集者と相談してから統一します。ただ、多くの場合は、わたしたちにまかされています。用語統一のために修正した文字は、どう修正したかをリストにして著者や担当編集者にわたしています。これだけでも、初校のアカの量は、ぐっと少なくなります。 |
上記の「テキストの整理」よりも重要なのは、テキストがきちんと構造化(階層化)されているかどうかです。一般にテキストは、「章」の下に「大見出し(節)」があり、その下に「小見出し(項)」があるという構造になっていますが、それがきちんと整理されていないことがあります。
とは言っても、章や節の構造化は、編集者の仕事です。ですので、そのようなデータの場合は、まず担当編集者と相談します。しかし、いままでの経験からいうと、テキストが構造化されていないことに気づくのは文字組を始めてからのほうが多いのです。そこで作業がストップしてしまいます。